まどロっこシア - ボリショイ劇場のドレスコード [29カ国目: Russia]

ロシア文学は "とにかく、まどろっこしい。" というのが、学生時代にドストエフスキーやトルストイを読んだ感想でした。

例えば、ドストエフスキーの"罪と罰"。小説内では、主人公が 「ひとつの罪によって多くの人が救われるなら、人を殺すことをも許されるのか"」について、鬱々と考えるところから始まります。

主人公はその金利の高さで多くの人に恨まれている高利貸しの老婆の殺害を決意するが、たまたま現場に現れた老婆の義理の妹まで殺してしまう。
無関係な人まで殺してしまったことで、主人公は精神錯乱状態にまで追いつめられるが、不遇の身の上から娼婦となった女と心を通わせ、罪を告白する。
シベリアでの8年の懲役をうけた主人公を追って、娼婦の女も売春業をやめてシベリアへ赴き、罪を償うための8年がはじまるー。

というのが大筋の流れですが、主人公の考えや言動はほんとーーーにまどろっこしい。

"だいたい、人間は何を一番恐れている?新しい一歩、自分自身の新しい言葉、それを一番恐れているじゃないか。
それにしても、おれはどうもおしゃべりがすぎるな。おしゃべりがすぎるから何もしないんだ。
いや、まてよ。何もしないから、おしゃべりをするのか?"



「気分が晴れないから、ランニングでも行くか!あー走ったらスッキリした!」
みたいに爽やかな感じには絶対にならず、主人公は何事も考えすぎてしまうのです。

さらに物語中では、


  • 主人公と同郷で老婆の家で働いていたペンキ職人が自首しだしたり
  • 飲み屋で出会った酒好きの元役人が事故で死んでしまったり
  • 心美しい娼婦が、殺してしまった老婆の義理の妹と仲良しだったことがわかったり
  • 主人公が娼婦に罪を打ち明けた内容が、娼婦の隣に住んでいた男に盗み聞きされていて、しかもその男は昔主人公の妹が家庭教師先をしていた屋敷の人で、今は娼婦のことが好きで、盗み聞きした内容を元に娼婦に交際を迫るも、交際を拒否されて最後はピストル自殺したり

まどろっこしくて、ややこしい。

古典だからややこしいのかな、と思っていましたが、オペラやバレーで有名なボリショイ劇場の現在のドレスコードも、相当まどろっこしいことを発見しました。
それがこちら。




Dress Code
In all ages a visit to the theatre was a festive occasion. Women donned their best evening attire and for their menfolk black tie was de rigueur. In our day, no one demands a strict dress code of visitors to the Bolshoi Theatre. In the mad hassle of Moscow life, a visit to the theatre comes, more often than not, at the end of the working day which rules out changing for the theatre. And, therefore, you will get away with a quite democratic dress form. You should not, however, take things to extremes: a man in shorts will not be allowed into the auditorium and women, in our view should keep to a decent dress style, bearing in mind that they may well be sitting next to people in full evening dress.

日本語訳: 
昔から、劇場を訪れることは華やかなイベントのひとつでした。
女性は最高の夜の装いに身を包み、男性であれば黒ネクタイの着用が絶対とされていました。
近年は、ボリショイ劇場に厳しいドレスコードを求める人はいません。モスクワの目を見張るような発展のおかげで、平日仕事帰りなど、もっと頻繁に劇場にきてもらえるようになりました。
そのため、 '民主的な(みんなが気分良くいられるような)' 服装がよいでしょう。
しかし、行き過ぎの格好はいけません。男性のショートパンツは入場を認められませんし、女性は、 '一定レベルの見苦しくないドレススタイル' をしてください。
あなたの隣に座る人は、もしかしたらイブニングドレスを着こなしているかもしれないことを、心に留めておいてくだだい。


まどロっこシア!

結局どんなドレスコードが求められてるのかよくわかりません。
同僚のRにこのドレスコードについて聞いてみました。

私:「これ、どう思う?すごいまどろっこしい表現がロシアらしいと思ったんだけど。」
R: 「うーん・・・。"ビジネスカジュアル"ってこと?」

一言で表現できました。

ロシアのまどろっこしいところ、好きですよ、私は。

ボリショイ劇場にみんながどんなドレスコードで来るのか、楽しみです。